座談会『地域産業・企業との連携を探る』
平成15年3月20日開催

司会と文章の纏め     YUVEC理事 小澤茂幸

座談会出席者: 前列左より、荒井(エヌテクノロジー<株>社長)、奈木(市工連青経会副会長・<株>奈木製作所専務)、坂本(市工連青経会会長・三栄工業<株>社長)、桶田(よこはまTLO<株>常務)、合志(YUVEC常務)、柳沢(<財>横浜産業振興公社参与)、後列左より、古賀(YUVEC理事)、田中(YUVEC理事)、小澤(YUVEC理事)、鈴木(産学連携コーディネータ)、白鳥(横国大教授)、田邉(横国大教授)、木下(横国大教授)

<出席者の簡単なプロフィールは最後に掲載されています>


座談会の様子 その1

プロローグ
 おのおの自己紹介のあと、司会者から本座談会の進め方と論点について説明の後、議論に先立って、「中小企業と(産学)連携」 「日本における地域密着型産学連携の動きの例」 「地域産業クラスター計画の現状」などについての情報を纏めた資料が紹介された。

司会者:当方で事前に準備した資料でもお示ししましたように、産学連携について日本国内の各地域ではそれぞれの特徴と実質的な効果・成果を生み出すために色々と工夫を凝らしているようですね。そこで本論に入る前に、「横浜地区の地域産業とは?その特徴は何か?」ということについて幾つかご意見をいただきたいと思います。(財)横浜産業振興公社など、産学連携、異業種連携等について多くの成果を上げておられ、豊富なご経験と知見をお持ちの柳沢さんからまずお話しをいただけないでしょうか。

横浜はサポーティングインダストリーの街?
柳沢:横浜はもともと歴史の浅いところで、港を開港してから150年くらいの街なんです。地域産業ということについて、よく使われるのが地場産業という言葉ですが、地場産業と言わないところに見識があるなあと思います(わらい)。地場産業というのがあるかどうかと訊かれれば私は横浜にはないように思います。スカーフがそうじゃないかという話しもありますが、確かに日本ではトップかもしれないが横浜の産業構造全体からみると小さなものです。そこは味噌とか醤油とかお酒だとか繊維とか地方の産地とはちょっと違っています。横浜は明らかに近代工業で培われた場所であり、しいて言うと、市工連青年経営者会に怒られるかもしれませんが「下請けの街横浜」だという感じがあります。何故かというと、横浜が開港したときに舶来文化が沢山入ってきて色んなものが横浜から国内に向けて発信されたわけです。そこで横浜へ行くと一儲けできそうだということで地方から人が集まってきて、高々150年くらいの間に350万人の都市になったというわけです。皆一儲けしようとするいわばベンチャーがいっぱい集まったのが横浜なんです。礒衛門石鹸や柴山漆器或いは洋家具など横浜発祥あるいは横浜名物と、昔、言われたものがありますが、その後、近代産業に移行し多くの名だたる大企業がこの京浜の一角に集まってきまして、地元の中小企業群が形成されたという構図となったのです。いま横浜には11万4千社くらいの事業所があってそのほぼ1割弱、約1万社が製造業です。ところがそのうち工業統計上に出てくる4人以上の製造業はもうすでに5千社を切っており、一方、従業員が1〜3人以下のいわゆる零細事業所が6千社くらいあります。横浜地区の第一番目の特徴は東京、大阪、名古屋などに比べると企業の規模がずーと小さく、また生活用品関連の事業所の数も極めて少ないということです。どちらかというと「近代産業の関連工業」が横浜には多いと言えます。もう一つの特徴は横浜の最大の悩みと思われますが、350万人は夜の人口の話しであり、昼間は75万人位が東京方面中心に市外に出るのです。ただ横浜も大都市なので40万人くらいが周辺から入ってきます。その差は35万人。大都市でこのように昼間人口が減るのは川崎、千葉、横浜ぐらいです。ほかの都市はほとんど周辺から人を集めています。そんなことで横浜の市民総生産と市内総生産の差はおおよそ2兆5千億円にもなり、この差をどうやって詰めるかというのは重要な行政課題となっています。生産活動の中心はやっぱりほとんどが東京ということで、たとえ事業の発祥は横浜であっても、大企業は経営戦略などをすべて東京の本社で決定し、工場や営業所が横浜にあるという形が多いのです。裏を返せば大企業の傘下でそれを支えている中小企業は横浜市内にいっぱいあるということです。そういう点から「横浜はサポーティングインダストリーの都市」だと言いたい。それらが大企業の高度な技術を支えているのです。

技術開発は世界共通だが・・・・・
木下:柳沢さんのこの分析は素晴らしいと思います。その見地だと、横浜というものが非常に良く理解できます。よく地域科学技術という言葉が使われますが、何故「地域」という呼称をつけるのか、「地域」という考え方についていつも疑問に思っていました。技術は世界共通なのに・・・。横浜国大では「共同研究推進センター」という名称にしていますが、全国で60を超える類似のセンターの中で圧倒的に多いのが「地域共同研究センター」という名前なんです。どうしても「地域」という名前を付けたがるのですね。もう一つ、「中小企業」という考え方も気になります。中小企業のための法制度があるから中小企業に対する産業政策があるのは認めますが、産学連携においてどうして大企業と中小企業を分ける必要があるのか? 実体に違いのあるのは理解できるけれども、技術の分野で企業の大小は関係ないと思います。柳沢さんのお話を聞いていて、実は神奈川県は「地域」ではないのではないかという気がしてきました。この地域は京浜工業地帯であって大企業を中心に他の多くの企業が集まっていたが、近年その大きな根幹が崩れたことによって今までどおりのことが成り立たなくなったことに問題があり、むしろそれに代替するものが無い限りは今の状況が改善されないわけです。そういう別の形に変えるにはどうすべきかが問題になると思うのですが、個々の企業にとってみれば、そんなことよりむしろ自分の所に仕事がくるかどうかが一番の関心事なのです。これまでの仕事をやめてでも次の方向に移るのか、あえて今の仕事を続けるのかによって、話が全く違ってきます。産学連携の現場でも同じことが言えます。ここでは余り「地域」ということに拘らない方がよいのではないかと思います。反対のご意見もおありでしょうが。

地域の特性に合わせた連携が必要・・・・・
田邉:反論します。いままでの中小企業政策は産業政策の一環でありましたが、これからは地域政策としての中小企業政策でないと成り立たなくなってきております。画一的な生産方式が国際競争力を失ってきた現在、個々の地域は個々の企業の独自性をどう活かしていくかということが問題となってきています。即ち、各地域、地域がそれぞれをどう活かしてしていくかということとなります。企業経営において最も大切なのは勿論お金勘定です。利益と資金繰りは全然違い、まずおカネをきちんとすることが大切です。もう一つは企業のライフサイクルの問題。既存事業の力のあるうちに新しい事業を考えなければいけません。そのためには何でもかんでも自分のところでやると言う考え方はあらためるべきであり、連携が必要であります。また、色んな業種が集まっているところで事業をやるのと田んぼの真中で事業をやるのとでは自ずからやり方が異なるべきであり、地域というものの特性に合わせたやり方が必要です。補助金、融資などもある程度地方の特色に合わせて自由にやれるようにすべきで、地域によって違うという考え方が重要だと思います。

木下:横浜を地域として捉えることも、そこに何があるかと考えることももちろん可能だと思います。しかし横浜には地域産業として特定されるものはなくて、はっきり言えば何でもあるといえます。むしろ首都圏と捉えるべきではないかと思います。横浜の中でこの業種だけやろうと言うことができるのか? 多分できないのではないだろうかという気がします。

田邉:横浜は先端的な企業が多いけれども、全体的には規模はあまり大きくありません。これまで色んな新興企業が生まれてきたために平均的に小さい規模の企業になってきているというわけです。重要なのは最小・最適規模をきちんと見定めることですね。話が少しズレてしまいましたが、神奈川県の地域産業においていわゆる地場産業といわれるものはやはり殆どないと考えます。例えば、いま神奈川県で一番大きな力を持っているのは電気機械産業(製造業就業者の21.5%)、次に多いのが一般機械産業、次が自動車産業といった具合です。特に電気機械産業には大きな企業を核にしたその衛星企業が多いというのが特徴です。もう一つ特殊な存在は金属製品分野(プレスなど)ですが、いずれも全国と比較すると企業規模が小さいものが多いようです。このようなことで、やはり地域ごとの特徴を重視する必要があると考えます。

田中:今回のテーマは、「地域の企業と大学との連携を議論しよう」ということではなかったのではないでしょうか? 「地域産業を議論する」のはちょっとレベルが高すぎて議論が合わないのではないでしょうか?。

司会者:横浜地区の地域産業ということで大上段に振りかぶったため少し話しが大きくなったようです。ただ横浜地区の特徴ということでは随分明確になったのではないかと思います。それでは引続きまして「地域の特性を活かした産学連携をどうするか?」という視点で議論をお願いしたいと思います。

希薄?大学における地域連携の意識
白鳥:連携ということを大学の立場から申し上げると、残念ながら我々の工学部では地域企業との連携ということを意識してやっている先生は極めて少ないのではないかと思います。そこから地域というのが抜け落ちているのが現状だと思います。多分TLOとかYUVECの方々が大学の先生へのアプローチの過程で色々と苦労しておられるのもそこにあるのではないかという気がします。大学の先生の場合、一般に大きな学会を相手とした活動が中心となっております。そこでは大きな企業とそれに繋がる系列企業という形であってそこから地域は抜けているのですね。我々の活動の中でも、地域の企業からアプローチがあって共同研究というのは非常に少なくて、学会での人脈を通じて全国規模での共同研究という形が圧倒的に多いのが現状です。ただこの横浜地区には比較的大きな企業が多くて共同研究しやすいという地の利があるといえます。また一番大きな産学連携はというと私の研究室では人の交流だと思っており、たとえば企業があるテーマで共同研究を本気でやりたいという時にはお金もさることながら「人」をまず送り込んでこられるのですね。社会人ドクターとかいう形で最優秀な人材を。そういう場合、近くにあるというのは有利といえますね。地域を横浜に絞らないで京浜地区ということでいえば私は結構多くの企業とお付き合いさせてもらっています。荒井さんの会社はいくつかの大学とがっちり共同研究をやっておられるようですが、多分、荒井社長自らそれに取り組んでおられるのだと思います。中小企業の経営トップが積極的に大学に飛び込んでおられる場合は恐らくうまくいっているのではないでしょうか。やっぱり一番難しいのは、先生方の意識改革ではないのかなという感じを常々持っています。

田中:今日は企業の方からたくさんお話をいただきたいのですが、YUVECでいま考えていることを話させていただくと、だんだん日本も大企業だけではもたなくなって、中小企業とかベンチャーにも元気を出してもらわないといけないということが構造改革とか経済改革とかで言われています。このような状況の中で中小企業も脱下請けが必要であると言われていますが、自力で突破口を開くためにうまく大学を活用すべきであると思っています。勿論いままでのことを否定するわけではありませんが、新しい産学連携を拡大するために、地域の中小企業と大学が一緒になって何ができるかということについて、私達はお手伝いをしたいと思っているのです。

司会者:それでは、市工連青年経営者会で会長をなさっておられる坂本さん、お願いします。企業の立場から、現状での経営課題、大学等に望むこと などについて、ご意見をいただけないでしょうか。

まだ未熟? 地域企業の産学連携
坂本:青年経営者会の立場からお話しします。近年、中国の製品が沢山入ってきて仕事量が減ってきており、経営環境はよろしくありません。そんな状況の中では、自社独自製品を持つこと、オンリーワンの特別のものを持つことが今後の目指す方向であると考えています。また、大学に対しては相変わらず敷居の高さを感じていて、望むことはあまり考えていないというのが現状の認識です。関連してちょっと青年経営者会のメンバーの意見をまとめてきたので奈木さんの方から説明してもらいます。

奈木:我々の青年経営者会のメンバーでは、3年ほど前によこはまTLOが出来た時、新しい可能性を期待して何社かが会員になりましたが、その後やめてしまった会社が多いようです。今回、会のメンバーからの率直な意見を集約しましたので以下に紹介いたします。我々の青年経営者会のメンバーでは、3年ほど前によこはまTLOが出来た時、新しい可能性を期待して何社かが会員になりましたが、その後やめてしまった会社が多いようです。今回、会のメンバーからの率直な意見を集約しましたので以下に紹介いたします。

問題点としては、
・ 一方通行で、こちらの意見を言っても回答がない
・ TLO、YUVECとで何が違うのか、よくわからない
・ 産学連携がビジネスの目指す利益を出すということに直結していない気がする
・ 地域での連携に限定してしまうと、企業として望む技術が制約されてしまう
・  異分野技術へのアプローチの仕方がよく分からない

望むこと/提案としては、
・ 講義形式(1対多数)ではどうしても話しが一方通行になってしまうので、テーマを多く作って少人数(5〜10人)ので行ってみるのはどうか
・ 全国規模の研究開発の状況をリベラルな解説で閲覧可能な情報網が欲しい
・ 困っている側からリクエストを公開して、アイディアを持っている側からの提案を募るようなシステムが欲しい
・ 長い目で見て、産学が一体になって起業の志を持った若者を養成する米国のMBAのような構想はどうか?
・ 地域産業発展のための中期的展望、目標を設定すべきだと思う
などが主な意見です。

柳沢:以上のようなことは、横浜市の経済局でも既に調査しておりまして、結論的に言いますと、施策として中小企業の産学連携は決してメジャーではなく関心のない方が多いのが現状です。中小企業としては今どうするかが強い関心事であって、産学連携はもう少し先の話となってしまうのでしょうね。坂本さんの方から自家製品という話しがありましたが、自家製品を持つのは現実、かなり難しいと思いますね。このことはまさに研究開発の問題ですが、製品ライフサイクルの極めて短いこういう時代ではなかなか儲からないのが普通ですね。特にハイテクの分野では。ところがハイテクの陰で儲けている人がいるのですね。自家製品ではないけれども大企業ではどこも作っていないものでして、その技術では日本一、世界一というものを持っている企業なんですね。技術の面で他社より先にいくというのはありますが、ただこれを大学の先生に聞きに行ってもなかなか埒が明かないことが多いようです。最近のナノテクなどの分野で一ランク上のものを大学の先生を活用してうまくやるという例もありますが、一般的には中小企業と大学とではミスマッチが多いのが実体だと思いますね。

中小企業ではなく 「専門企業」と言うべき?
鈴木:いまの話しはわからないではないのですが、私が企業に在籍した時の経験から言えば、3〜5年先を大学に聴きに来るのは間違いで、大学には10年以上先のことを相談すべきだと思います。また大企業と中小企業を単純に区別するのもおかしいと思います。中小企業の方が優れている場合もありますし、いずれにしてもレベルの高いものを持っているところが生き残るのです。

柳沢:なるほど、中小企業というのではなくて「専門企業」と言うべきでしょうか。総合というのは特徴がはっきりしなくてこれからはだめだと思います。“専門性”で勝負しているところは大企業も大事にしますよね。その専門企業ということであれば、もう一ランク上げてブレークスルーしていきたいということで大学を活用するところが出てきそうだと思いますね。 司会:奈木さんから紹介していただいた問題点については多くの方々がすでに認識しておられると思いますが、これらをどうクリアしていくかが重要かと思います。こんな視点で荒井さんの方からご意見をいただけますでしょうか。

新人類が連携を推進?
荒井:弊社は中小企業にも入らないベンチャー企業を運営している立場からお話しをさせていただきたいと思います。我々企業では「どうやって生きていくか」がポイントであり、そのために技術だけでなく流通、その他、いかに差別化するかということを常に考えて経営しております。ただそれらは簡単に自分たちの技術だけで開発できるものではありません。そこで先生にお願いする訳ですが、何かをやろうとする時、何をやったら売れるかなどについて決して相談したりしません。自らがすべて判断して先生に「こんなことはできますか?」と相談するのです。「自分の意欲が伝われば」、お金は多くなくても結構、協力して頂けますよ。

柳沢:荒井さんは新人類だと思いますね。横浜にとってもこのような新人類が増えれば活性化するなと思います。

座していては、産学のマッチングは困難
田邉:産学連携に関して私なりの経験から申し上げると、大学側が企業のニーズを聞いてそれに対応するのは無理だと思います。そしてそれはあまりうまくいかないと思います。私は、むしろ大学側が技術シーズを明確にすべきであると考えます。それを各企業が自由に選択できるシステムを作り上げることが重要だと思います。

鈴木:私の経験ではそういうやり方ではうまくいかないと思っておりまして、やっぱり企業のニーズを出発点とする連携が大切だと思います。

白鳥:先生が面白いと言っているだけものはシーズになりえないと思います。産業界は3〜5年程度先しか見ていない。それに対して大学の研究はもうちょっと基礎的で息の長いテーマが多いと思います。先生方が企業ともっと付き合って研究テーマを設定する段階でこれは将来シーズになりうるということをはっきり意識してやっていくべきでしょう。

田中:田邉先生の言われている各企業が大学のシーズを選択して使うことは、R&Dの機能を持っている大企業では有効ですが、中小企業では単独ではなかなかやれないのが現状です。また先生が研究するテーマをニーズ寄りに変えていただくということについて、我々も研究室を訪問して産業界のニーズ、状況などを紹介していますが、先生ご自身で判断していただくので、一般にかなり時間がかかりそうですね。

田邉:その辺はかなり奥深い問題であり、教官の評価とも関わることで簡単にはいきません。企業側も大した知識がないままに大学を訪れるということも多いようです。企業側が利用しやすいような形での整理が大学側で、是非、必要だと思いますね。

田中:ちょっと違う考え方ですが、荒井さんのようなアプローチができなくてあまり大学を理解できていない企業の方々のために、YUVECでは「中小企業の若い経営者に来てもらう場」を作ることを考えています。そこで大学の先生とのコミュニケーションを深めてもらおうと思っています。従来型の企業の方々には荒井さんのようなアプローチでやってもらえるようサポートをし、ビジネスプラン作成や教官の選択、大学への依頼手続きなどについて一緒に相談して推進出来るような場にしたいと思っています。

田邉:産学連携の仕組みが必要であり、これらをコーディネートする人が重要だと考えます。大学で出来るもの、公設研究機関でやるものなどを全体としてきちんと整理して組み合わせていく仕組みを作る必要があると思いますね。こうすれば企業から見て大学でのアプローチ先も明確になり技術の活用などもしやすくなるはずです。

白鳥:共同研究推進センター発足時、専門分野別に企業が困っていることに対応する仕組みとして「エンジニアリングホスピタル構想」が提案されておりましたが、残念ながらその時はセンターにはあまり人がいなかったので、そこで私が共同研究推進センター長をやっていた時にネットワークの活用が有効ではと考え、バーチャルリエゾンオフィスなども考案したのですが・・・

木下:早く実現すべく努力している最中ですが、あまりの忙しさに私の時代に止まってしまっているのが実情です。

荒井:連携が目的ではないと思います。企業は自分に無い技術の補完を望んでいるのです。企業の目的と大学の側の目的が明確でないと連携はうまくいきません。うまくいかないのはその辺が明らかに違っているのではないでしょうか?企業はいい技術を探したい。他方、大学は自分の技術を世の中の役に立てたい。これがフィットしないとなかなか連携は成立しないと思います。

田中:具体的な成果の出せる連携ですね。いまYUVECでやりたいことは、そのギャップを埋めて成果の出る産学連携をやることです。それにはコーディネート機能が必要ですし、両者のコミュニケーションの場を増やすことが必要と思っています。

白鳥:大企業でも今は研究所を持ちきれなくなっています。多くの大企業では、世界中の先生が何をやっているかを厳密に調査しその技術をマップ化して必要時にアプローチするというやり方に変えてきているようです。その際、大学が理解しやすいように工夫した形で大学に依頼をするようしています。こういうことが中小企業にはまだできないですね。

荒井:白鳥先生のように外に向いてテーマを決めていくという先生の場合はいいのですが。自分の場合、複数の知人の紹介を通じて必要な技術を持った先生にやっと辿り付いたということを経験しています。

柳沢:(財)横浜産業振興公社でも横浜市内理工系8大学の先生方のリストは全部作って持っていますが、それだけでいい先生、技術は見つからないし、またホームページだけでもうまくいきませんね。それ以外にやっぱり人と人との関係、人脈が重要であるということを強く感じています。

司会者:言われていることはまさにその通りですが、実際にやろうとするとそんなに簡単なことではないですね。関連して坂本さんからご意見をいただけないでしょうか。

坂本:市の工業連合会に入っているのが約2600社ですが、われわれの会員のなかで3件くらい、先生を通して大学連携をうまくやった例があると聞いています。中小企業が抱えている問題点の解決ということに関しては、ポイントになる視点を変えればすぐ解決するということで先生方にお願いすることはあまり無いという認識を持っています。ただ先生とのつながりを持ちたいということで、以前、国内留学をやっていたこともあります。また中小企業向けに別の切り口で何か別のシステムを作ろうということで、YUVECさんと一緒になって新しい活動をいま検討しているところです。

白鳥:「人を派遣」という観点で大学を活用していただくのは非常に大事なことだと思いますね。

合志:実は荒井さんのところでは、横浜国大の先生の技術がYUVECの“技術交流サロン”で結びつき、新しい仕事が始まろうとしています。やっぱり、産学連携では大学と何をいつまでにどのレベルまでのことをやりたいかなど技術開発のマイルストーンがはっきりしているような情熱がないとうまくいかないように思います。

荒井:お互いの相性も大切なように思います。

合志:“技術交流サロン”は、お見合いの場です。YUVECは仲人です。履歴書だけでは決心できませんよね。会って話してみないと……。

鈴木:私の経験では、企業ニーズのうち大学の研究とは関係の無いものが6〜7割くらいあるという認識をもっています。例えば品質管理だとかおよそ大学に聞いても無理と思われるものなどが沢山あるのです。しかしこのようなことにも対応することが重要だと今は信じてやっております。

柳沢:そういうことは(財)横浜産業振興公社が交通整理しますよ。あまり大学が真正面から受け止めると大変ではないでしょうか。

鈴木:そういうわけにもいかないでしょう。

坂本:中小企業技術支援センターあたりがやるとよいのではないでしょうか。

企業の悩み、モノを作っただけでは売れない
奈木:我々はベンチャー企業ではなく既存の企業です。青年経営者会のメンバーの間でもこのままではいけない、コスト削減だけではダメだなどという認識を皆持っています。でも、コスト削減を求めて中国などに行ける企業はそんなに多くはありません。それでは日本で何をやれるのか?を考えて、一般的には、人件費比率の低い事業、付加価値の高いものを皆追求しようとしています。他方、新しい市場・ニッチ市場を対象としたビジネスモデルを考えています。その中で2年ほど前、技術、ビジネスチャンスの面でTLO等に大いに期待をしたのですが、その後、結局失望したというのが実態のようです。何故かというと、大学の先生の成果は基礎研究、一方、中小企業が求めるものは「製品に近いレベルのもの」ですね。成果を上げていくには中小企業に分かる内容のものが必要です。大学側からのシーズの一方通行ではなく、中小企業側からのシーズ(アイデア、技術)を提供するケースも検討して頂ければと思います。大学のものは一般に難解なものが多いと感じています。中小企業が産学連携に期待することは、大学で研究してもらいリスクを分散させたいということです。中小企業には研究開発に時間とお金をかける余裕がないのです。更に外にも目を向けてやっているのが異業種交流会などの活動です。そこで何社かが集まって新しい製品を作り特許も取るのですが、なかなか売れないのです。中小企業の経営者はモノができた段階で満足してしまっており、マーケティング不足が原因だったと思います。開発した製品を売って利益を出すところまでなかなかいかないのです。

柳沢:国などの補助金もモノを作るところまでで、その先はなかなか出ないですね。

坂本:以前、「TLOの成果は何ですか?」と伺ったことがあります。それに対し、「38件のお見合いが出来たのが成果です」というお答えをいただきました。私はこれまでの経験から、「モノを作っただけではダメ(売れない)」との認識を持っています。

ソリューションは気楽で真面目なミーティングから

司会者:かなり現状での課題が具体的に見えてきたように思います。そこでYUVECの合志常務理事より、来年度、YUVECが計画している新事業、特に産学連携の実質的な促進を目指した新企画を中心に説明していただきます。

合志:(OHPにてH15年度のYUVEC事業計画について説明)従来のセミナーや講演会方式ではなく、問題意識を持った少人数の産学からのメンバーによる気楽な雰囲気での議論を通じて、産業界のニーズに基づくテーマや大学技術の活用について交流、連携、共同研究などを推進していく新しい交流の場  “よこはま産産学交流フォーラム(仮称)”を4月から計画しています。“産産学”とあえて表現しているのは、複数の企業・産業界の交流、連携、コンソーシアムなどを意識してのものです。また最近、“研究室めぐり”もやっていますが、個々の先生とじっくり話し合うことが大変重要だなと感じ始めています。情熱に溢れた産産学の小人数が集まって討議すれば素晴らしい成果が出てくると信じます。そんな場をYUVECは提供したいと思います。

桶田:よこはまTLOでは大学のシーズをもっとわかりやすく表現しようと心がけています。研究成果、特許を何に使うのかどのように使えばよいのかなどを明確にしていこうと思っています。色々な要望に対してトライアル&エラーでやっていますが、大学のシーズが世の中に少しずつ出るようになってきています。またこの逆の企業のシーズを大学の方へ導入する或いは大学のニーズを企業の方へ紹介するというのもあってもよいのではないかと思っています。このようにして一方通行だけではなく、双方からのコミュニケーションがあって初めてお互いに信頼関係が構築されるのではと期待しております。

坂本:このように不景気になってくると、世知辛い話しですが諸団体へ参加する法人会費についても負担ですので、自ずから有効なものに制限せざるを得なくなってきています。この辺のところの事情も今後、活動をやっていく上で是非考えていただきたいと思います。

木下:要は「産学連携のための産学連携ではダメ」ということですね。単なる依頼とか受託で研究をやるということでなく、いよいよ「横浜地区で何か新しいことができないか?」というフェーズに入ってきているということだと思います。会費の件についてもトータルでうまいシステムを考えていく必要があると思いますね。

白鳥:日本の企業は海外の大学には多額の研究費を投資しているが、日本の大学には優位な技術が少ないという判断で少額にとどまっているケースが多いのが現状のようです。また、欧米の大学では、企業のニーズに対し迅速に対応するため、「学科あるいは学部を越えた複数の先生の連携からなる研究プロジェクトあるいは研究センターの構築」などが行われています。こういうことができれば企業からの信頼度も増すと思います。 この辺についても現状をきちんと認識した上で、日本の大学にも必要な資金は出す新しい意識と行動が必要だと思います。

合志:産学連携の前に、大学はもっと学内連携をして大きなシーズを育てて頂きたいですね。

エピローグ
司会者:予定していた時間も既にオーバーしてしまいました。「地域産業との連携を探る」というテーマは色んな要素を含んでおりなかなか纏めにくいのですが、産学連携ということに関して言えば、ここ数年の諸活動で企業、大学等双方の意識も大きく変化し好ましい方向に進展してきているように思われますが、もっと実質的な成果を多く上げていくには、「両者を仲立ちするコーディネーターの役割がますます重要なこと」と、更にこれらの連携の中で「ビジネスプランまで一緒に考えること」の必要性が強く示唆されたように思います。
 またYUVECでは、本日ご議論いただいたことも含めて諸課題、問題点に対処すべく、「産学交流・連携の新しい形」を追求していきたいと思っています。


座談会の様子 その2

出席者のプロフィール
木下 眞:横浜国大共同研究センター教授。文部科学省時代は産学連携推進施策に尽力。平成13年度より出向し、本学における産学連携の新しい仕組みの構築等に注力(平成15年度より帰省)。

白鳥正樹:横浜国大工学研究院教授。システムの創生部門、システムのデザイン分野(4月より工学研究院長に就任)。産学連携を自ら積極的に実践。

田邉信義:横浜国大経営学部経営学研究科教授。 中小企業政策についての日本における第一人者。

荒井潤一:エヌテクノロジー(株)社長。 新横浜にオフィスを構え、負荷分散技術をベースに並列化ビジュアルコンピューティング環境を提供する事業。現在、大学技術を積極的に事業に活用。

坂本宏夫:横浜市工業会連合会横浜青年経営者会会長。三栄工機(株)代表取締役。本学機械工学科卒。有意義な産学連携活動を目指したい。

奈木伸行:横浜市工業会連合会横浜青年経営者会副会長、同産学交流委員会副委員長。(株)奈木製作所専務取締役。

柳沢 剛:(財)横浜産業振興公社参与。横浜市し職員として中小企業の診断指導などに尽力。その後、横浜産業振興公社において産学官連携などを推進。また多くの著書あり。

鈴木 毅:横浜国大共同研究センター産学連携コーディネータ(平成13年11月から着任)。元(株)東芝に勤務。 大学の立場から大型の産学連携P/Jをコーディネート中。

桶田吉紀:よこはまTLO(株)代表取締役。昭和39年本学電気工学科卒。日立製作所勤務。特許関係業務に従事。平成13年によこはまTLO(株)設立に参加。

合志誠治:YUVEC常務理事。横浜国大共同研究推進センター客員教授。昭和40年電気工学科卒。元(株)東芝に勤務。YUVECやTLOの設立準備段階から参加。

田中繁夫: (有)ティップリサーチ 代表取締役。経営&技術コンサルタント(中小企業診断士、技術士)。日米のベンチャー企業をハンズオンで支援するエンジェル。中小企業の新規事業創出及び経営革新相談。昭和39年電気工学科卒。元(株)東芝。

小澤茂幸: YUVEC事務局担当理事。昭和45年名古屋大学大学院応用化学専攻修了。元旭硝子(株)研究開発業務に従事。企業の立場から産学連携の経験あり。

司会者のまとめ:
 地域の時代、地域産業の活性化という掛け声が喧しい。経済産業省、文部科学省などからも地域産業クラスター計画、知的クラスター計画などの施策が昨年来施行され、また国内各地域ではTLOなどを中心としてそれぞれの独自性を求めた諸活動が活発に推進されている。また横浜についても中田市長自らが「有数の技術と人材が集積した街」など“横浜メリット”をアピールし、ベンチャー企業の地元誘致を呼び掛けたイベント「YES横浜ベンチャーフォーラム」が3月に東京都内で開催され、新産業の創出、育成に向けたアプローチが加速しつつあるように見える。
 このような背景のもとで、今回の座談会では「大学との連携の中でどのように“よこはま”らしさを発揮して、地域産業を活性化させていくか?」について議論するつもりであったが、地域産業の活性化というのはあまりにも大きく広すぎるテーマであり、また、地域・地場産業の定義は? もともと横浜に地場産業は存在しないのでは?  などの疑問も提示され、最終的には「地域企業と大学との連携」にフォーカスして議論とすることとなった。
 地域企業との連携を最初から強く意識したかたちの産学連携はそれほど多くないのが実状のようである。しかし大企業、中小企業を問わず地域企業の活性化が取りも直さず日本全体が元気を取り戻す源であり、地域それぞれの特色を生かした自由な産学連携の推進が期待される。
 今回の座談会では地域企業との連携を推進する上での問題点、その促進のポイントが明確になった。YUVECとしてもこれらの活動を支えるために、平成15年度の新事業として「よこはま産産学」交流フォーラム(仮称)」を計画していますので、本フォーラムへの多数の皆様のご参加を強く期待しております。